本日は、東京都墨田区にある「東京都立両国高等学校」の高校1〜2年生の授業で、当法人の高校向けプログラム「社会課題に取り組む企業やNPOの実践事例からSDGsを学ぶ」を行いました。
本プログラムは、東京都教育庁地域教育支援部生涯学習課が行う令和7年度「都立高校生の社会的・職業的自立支援教育プログラム事業」の一環として、「総合的な探究の時間」の授業内で実施しました。


「社会課題に取り組む企業やNPOの実践事例からSDGsを学ぶ」では、当法人がSDGsに関連する取り組みを行っている企業やNPO・団体様をゲストティーチャーとしてコーディネートし、授業内で実際の事業や取り組みをご紹介いただくとともに、テーマに沿ったグループワーク等を行うものです。生徒のみなさんには、事前にどのテーマの授業を受講したいか選択してご参加を頂いています。
今回の授業では、特定非営利活動法人NPOサポートセンター様、株式会社ガイアドリーム様、公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン様、三ッ輪ホールディングス株式会社様、株式会社日本HP様、株式会社フィノバレー様の計6つの企業・団体の皆様にご協力をいただきました。
各授業の様子は、以下のようにご紹介いたします。
▼中間支援(パートナーシップ):特定非営利活動法人NPOサポートセンター
NPOって何?〜社会の課題や社会貢献とあなたはどうつながるか~


NPOサポートセンター様からは、まずはNPOという組織についてお話をいただきました。社会課題やSDGsと関係が深いことや、行政や民間企業とはどのようが違いがあるのかなど、基本的な理解について深めていきました。ゴミ拾いをするにも、継続的に実施していくためには収入が必要であることも、ミニワークを通じて知っていきました。
後半のグループワークでは、グループで一つテーマを決めて、そのテーマで取り組むNPO法人を調べ、マーケティング視点で整理するワークを実施しました。同じテーマでも、団体によりVisionや活動内容、顧客や発信手段、規模は異なります。複数の団体を調べることで、各NPO法人の特徴や魅力が見えてきました。生徒さんからは、思っていたより多くの寄付を集めている団体が多く驚いたという声も上がりました。
※特定非営利活動法人NPOサポートセンターについて
https://npo-sc.org/
(担当スタッフ:山田)
▼フードロス(環境対策コンサルティング):株式会社ガイアドリーム
食品ロスがもたらす地球温暖化 なぜ、食品ロスがダメなのか?


株式会社ガイアドリーム様には「脱炭素と食品ロスとの関係」をテーマにお話をいただきました。はじめに「1.5℃の約束」や、脱炭素社会構築など、環境についてのお話をいただき、その後は、日本国内の食品ロスの現状についてお話をしていただきました。食品ロスを、子ども食堂やフードバンクに回したい気持ちや、受け取りたい気持ちがあるにも関わらず、配送車や工場などの関係で難しい現状、では、これからの未来はどうすれば良いかという内容に子どもたちも興味深く話を聞いていました。
後半は、「スーパーの責任者になり、家庭から出る食品ロスを減らす方法を考えよう」という課題が出され、グループワークをしていきました。音楽から人の心理を変えたり、写真によって人の情けに訴えるといった意見や、返却ボックスやバイキング形式のお惣菜コーナーを作ろうなど、様々な意見が出されこの時間を終えることができました。
※株式会社ガイアドリームについて
https://gaeadream.co.jp/
(担当スタッフ:杉田)
▼貧困・格差(教育支援・寄付):公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン
子どもの教育・体験格差解消に向けたチャンス・フォー・チルドレンの取り組み


公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン様には「格差・貧困」をテーマに、子どもの教育・体験格差についてお話しいただきました。
前半は現在の子どもの貧困問題や教育格差についてご説明いただいた後、格差を生む「放課後」の時間に事業としてどのように家庭支援を行っているのか、子どもの体験活動の大切さを踏まえお話しいただきました。また、支援を通した子どもの変化について、支援家庭の子どもと直接関わる大学生ボランティアの方からもお話をいただき、生徒たちもテーマに実感をもって耳を傾けていました。
後半のグループワークでは、生徒たちが墨田区の小学生に体験活動を提供するプログラムづくりに取り組みました。墨田区にある地域資源を踏まえ、子どもたちにどのような体験が必要なのかを、実際に開催予定のイベントの実施条件に合わせながら、具体的かつ柔軟なアイデアで考えを深めていきました。
※公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンについて
https://cfc.or.jp/
(担当スタッフ:伊藤)
▼ジェンダー平等(情報通信):株式会社日本HP
世界に踏み出す前に!知っておきたい「DE&I」と「ジェンダー」とは?


株式会社日本HP様には、「世界に踏み出す前に知っておきたい『DE&I』と『ジェンダー』とは」というテーマでお話をいただきました。多様で包括的な社会とはどういったことなのか、このような世界を目指す必要性について学び、さらに性別による格差や固定観念・偏見の問題について掘り下げて説明いただきました。また、ジェンダーの常識が時代と共にアップデートされていることを時代の流行を例にわかりやすくお話をしていただき、生徒たちもメモを取りながら真剣な眼差しで聞いており、多くの生徒たちが興味を持って質問をする様子がありました。
また、後半では、昔から長く続く人気アニメから、ジェンダーバイアスを見つけ、それについて感じたことや、どのように対応するかを考えました。性別の固定観念に目を向けるばかりではなく、そのように表現がなされている理由まで考えようとする積極的な姿を見ることができました。
※株式会社日本HPについて
https://www.hp.com/jp-ja/home.html
(担当スタッフ:志村)
▼まちづくり(デジタル通貨):株式会社フィノバレー
デジタル地域通貨を使ったソーシャルイノベーション(社会課題解決)


株式会社フィノバレー様から、「まちづくり」のテーマで「デジタル地域通貨を使ったソーシャルイノベーション」についてお話をいただきました。前半の講義では、通貨の歴史やマクロ経済に関するお話を通じて、普段何気なく使っている「お金」の価値について改めて考えるきっかけになりました。
後半のグループワークでは、墨田区の課題解決に向けて「デジタル地域通貨」を活用するアイデアを出し合いました。地域通貨を利用しながら「区の体育館を利用するごとにポイント付与」「ボランティアに参加するごとにポイント付与」など、高校生ならではのアイデアが沢山飛び交いました。社会課題の解決に向けて、地域通貨という観点から自由な発想を広げることができました。
※株式会社フィノバレーについて
https://finnovalley.jp/
(担当スタッフ:中村)
▼エネルギー(電気・ガス):三ッ輪ホールディングス株式会社
もし明日、日本が”非常事態”になったら?〜災害や有事に備え、住み続けられるまちづくりを考えよう〜


三ッ輪ホールディングス株式会社様には「エネルギー」をテーマに「もし明日、日本が非常事態になったら?」というお話をいただきました。前半は日本が抱える様々なリスクとリスクに対する対応、三ッ輪ホールディングス様の取り組みをお話しいただきました。客観的なデータと共にリスクが解説され、リスクが私たちの生活を脅かす可能性があると実感できました。講義の合間には登壇された方に質問に行く様子も見られました。
後半のグループワークでは、気候変動や人口減少などのリスクの中からグループごとに考えるリスクを決め、個人・自治体・企業のそれぞれができるリスクへの対応を考えました。各々が持っている知識を活かして個人・自治体・企業の立場に立ち積極的に考える姿勢が見られました。
※三ッ輪ホールディングス株式会社について
https://mhdg.co.jp/
(担当スタッフ:加納)
◎東京都立両国高等学校 研究部 渡邉志帆先生からのご感想
今回は貴重なご講演、ワークショップをありがとうございました。例年はこの時期にゼミ別講演会として大学の先生方にご講演いただいておりました。今年度は生徒が社会課題について学ぶ機会として今回のプログラムを依頼しました。探究テーマがご講演内容と直接関係していた生徒も多く、大変参考になりました。
具体的な社会課題について取り組みやすいワークショップをご準備いただいたことで、生徒は意欲的に参加することができました。社会課題を自分事と捉えられない、という本校の生徒の課題も明確になりました。自らの日常に切迫した「困り」の無い生徒たちが、社会課題に目を向けて探究課題を設定することは、教員が考える以上に難しいことなのかもしれません。身近な「モヤモヤ」を深く堀り下げることで、各生徒が自分事と思えるリサーチクエスチョンに出会えるよう指導していきたいと思います。
各授業のご紹介は、以上となります。
どの授業もゲストティーチャーの話をじっくり聞き、真剣にグループワークに取り組んでいる姿が印象的でした。授業後に実施したアンケートからも、普段はなかなか知ることができない様々な取り組みや課題について学ぶことができたと大変に好評でした。今回の授業で学んだことが、少しでも生徒の皆さんの学びにつながっていれば幸いです。