2017/04/13
子どもや若者を対象とした社会教育活動に取り組んでいるNPO法人夢職人では、多種多様なバックグラウンドを持った大学生や社会人がボランティアスタッフとして多数在籍し、子ども達の多彩な体験活動を支えています。
スタッフは、先生や親とは異なる立場から子ども達と関わり、親しいお兄さん・お姉さんのような存在です。「another story-もう一つの社会との関わり方」では、そんなスタッフたちが活動をはじめた経緯や活動で感じたことなど、普段はあまり語ることなかった物語をお伝えします。
今回は、大花綾さん(はなちゃん)をインタビューしました。
―まず自己紹介をお願いします。
この春から大学3年生の大花綾です。大学1年生の終わりに夢職人に入りました。大学では保育を専攻していて、将来は保育士を目指しています。趣味はフェスに行くことで、ロックが大好きです。
―ロックが好きなんだ、意外(笑) はなちゃんは保育士を目指しているということですが、そもそもどうして保育士になろうと思ったんですか?
ありきたりかもしれないけど、子どもが好きだったからです。子どもが好きだなと思ったのは小学生の頃。まだ自分も子どもだったけれど(笑)。近所の小さい子と遊ぶ機会が多くて、公園を一緒に走り回っていました。そうして高校に入って将来の進路ときちんと向き合うようになって、企業に入るとか色々な選択肢も考えました。だけどやっぱり、「大好きな子どもと遊びながら成長を支える仕事に就きたい!」って思ったんです。それで、保育の勉強ができる大学に入りました。
―なるほど。確かに小さい頃の経験って、ずっと自分の中に残るよね。では、はなちゃんが、夢職人に入ろうと思ったきっかけを教えてください。
保育の勉強ができる大学に入ったのに、「子どもと関わる機会が全く無かった」というのが大きな理由です。2年次の終わりに実習があるのですが、それまでは本当に机の上の勉強だけ。確かに授業はとっても面白いし、勉強になるけど、子どもに関しての知識をただ頭に詰め込むという生活に違和感を感じていたんです。やっぱり、実際に関わってみて色々なことを学びたいなあって。それで、大学1年生の終わりの春休みに、ネットで検索して夢職人の活動を知りました。
(大学のキャンパス内・周辺は自然がいっぱい。大学の友達ともよく一緒に出かけています。)
―そうだったんだね。でも、数あるボランティアの中で、どうして夢職人だったんですか?
ネットで検索したときに他のところも探してみたのですが、単発のものばっかりだったんです。保育士は、自分のクラスを持って年間で継続して子どもと関わる仕事なので、自分が関わった子どもの成長を見られる団体がいいなあって。夢職人はそこが魅力でした。保育園のボランティアも探したのですが、探した時に出てきたのは清掃スタッフばかりで。それじゃあ自分がやりたいこととは少しずれてしまうかなって。あとは、初めは、保育士と限定しないで「子どもと関わる仕事」と漠然と考えていたんです。だから未就学児に限らず、小学生や中学生など、幅広い年齢の子どもと関わってみたいなって。はじめは小学校の免許も取ろうと思っていたし…。
―学校の先生ではなくて、やっぱり保育士になろう!と決めた理由は何かあったんですか?
なんとなくだけど、「学校の先生」というのがしっくり来なかったんです。子どもたちの前に立って授業をしたり、勉強を教えたりするのではなくて、同じ目線で一緒に遊びながら成長を支えていく方が、自分に合っているなと思って。
―「一緒に遊びながら成長を支えていく」って大事な考え方だよね。ところで、はなちゃんがこれまで学校の実習や夢職人で子どもと関わった中で、心に残っているエピソードって何かありますか?
2年生の終わりに、児童養護施設に実習に行った時の話です。ちょっと嫌なことがあるとすぐすねてしまう、4歳の男の子がいました。その子がすねてしまった時、私はずっと付き添っていました。でも、状況が変わるどころかずっとすねたままで口も聞いてくれなくて。それで困って施設の職員の方に相談したんです。そうしたら、「ずっと付き添っているだけじゃ変わらない。何が嫌だったのかちゃんと聞いてあげた上で、一人で考える時間をあげることも大事だよ。」と言われたんです。それで、その後また同じ状況になったときに、そのことを大事にして接してみたんです。何が嫌だったのか聞いてみたらちゃんと答えてくれたので、選択肢を与えて、一人で考えてごらんと言って遠くで見守ってみました。しばらくしたら泣き止んで、笑顔でこっちに来て、「一緒に遊ぼう!」と言ってもらえました。その時、どんなに小さい子でも、ただ寄り添うのではなくて、自分で考えさせることが必要なんだなって実感しました。
(子どもの話を丁寧に聞いてくれるはなちゃん。いつも子どもたち一人ひとりの状況に配慮している。)
―それは素敵なエピソードだね。子どもって、年齢が小さくても考える力がちゃんとあるんだよね。では、夢職人で実際に活動をしてみて、心に残ったことや、学べたことはありますか?
これを言うのは恥ずかしいんですが、「子ども一人ひとり全然違う」ということです。子どもってこういうことが好きで、こう言ったらこんな風に返してくれてっていう勝手な先入観があって。夢職人で活動して、いい意味でそれが崩れ去りました。一人ひとりがどういう子なのか、それを丁寧に見ることが大切だなって。キャンプやデイプログラムで班を担当した時は、みんなやりたいことが違うし、解決方法を考えようにもまたそこで言うことも違うので、それを1つのチームにしていくのはすごく大変でした。夢職人では5~6人の班だけど、保育士になったら20人規模になるので、今から鍛えたいと思います(笑)。
―ぜひ、鍛えてください(笑)。その他に学べたことはありますか?
子どもが楽しめる工夫や、話を聞いてもらうための引き出しを持っておくことは大事ってことかな。スタッフはみんな、前で話す時に子どもが注目しやすいような工夫をしたり、ちょっとした待ち時間にミニゲームをしたり…など、子どもがいつも楽しくいられるような工夫をしています。まず「楽しい大人」と思ってもらえることで、信頼関係も築けるのかなって。いろいろな先輩スタッフの姿を見て、それがとても勉強になっています。
―確かに、みんなそれぞれ工夫していて勉強になるよね。それでは夢職人で得たことを糧に、どんな保育士を目指しているかを教えてください。
2つあります。1つは、子どもの等身大に立って、一人ひとりと丁寧に関わる保育士です。先ほどもお話しましたが、子ども一人ひとり全然違うので、子どもの気持ちをしっかり考えたり、思いを受け止めて理解しようとする姿勢を大切にしたいなって。
もう1つは、子どもの力を信じる保育士です。夢職人では、小学1年生から、ノコギリとか包丁とかを、丁寧に指導した上で使わせます。大人の考えで「これはできないだろう」と限定して遊びを用意するのではなくて、子どもの力を信じて見守っていけるようになりたいなと思います。こういった考えは、夢職人で活動してこそ見えてきたので、本当に良い経験をさせてもらっているなあと思います。
―はなちゃんなら素敵な保育士になれそうですね。インタビュー、ありがとうございました!
(インタビュアー:こだちゃん)