2016/07/07
子どもや若者を対象とした社会教育活動に取り組んでいるNPO法人夢職人では、多種多様なバックグラウンドを持った大学生や社会人がボランティアスタッフとして多数在籍し、子ども達の多彩な体験活動を支えています。
スタッフは、先生や親とは異なる立場から子ども達と関わり、親しいお兄さん・お姉さんのような存在です。「another story-もう一つの社会との関わり方」では、そんなスタッフたちが活動をはじめた経緯や活動で感じたことなど、普段はあまり語ることなかった物語をお伝えします。
今回は、石川稜さん(いっしー)をインタビューしました。
-普段、大学では何をしていますか?
今、大学3年生で社会学を専攻しています。
-大学のない日は、何をしていますか?
ひとりで散歩に行くことが多いです。自分が大好きな自然に触れたり、ゆっくり空を眺めたりしてリラックスしています。普段の忙しい毎日からちょっと離れることで気持ちの切り替えをして、よしまた頑張ろうって思えるんです。あとは、音楽が好きでよく聞いていますね。JpopとかJrockのジャンルを聞くことが多いかな。基本的に家にいるより外に出ている方が多いです。
夢職人以外でも「僕らの夏休みProject」というボランティアもやっています。大学生が夏休みの長期休暇を利用して、震災の被害に遭った被災地の小学生たちに笑顔を届け、地域と交流するという活動です。色々な大学に支部があって、それぞれの大学で科学実験や運動会、レクリエーションなどを企画してやっています。夢職人の活動に加えて、学生のうちにしかできない「僕夏」にも力を入れて参加しています。なので、夢職人の活動日と大学以外の時間はこのプロジェクトをやっていることが多いです。
-ボランティアに興味を持ったきっかけは何ですか?
大学1年生の春に、大学の生協を通じて東日本大震災のボランティアに参加してみたことがきっかけです。その当時は「暇」をしていて、春休みだというのに何もする事がなく、母に「ボランティアに行ってみれば?」と言われるほどでした(笑)でも、その何気ない一言で「よし、じゃあ参加してみようかな」と思い、申し込みをしました。
-そのボランティアではどんな事をしたのですか?
最初に行ったボランティアは宮城県の七ヶ浜。内容は、東日本大震災のメモリアルイベントの運営・制作をするというものでした。被災地の写真を撮ってまわったり、実際に現地の人に話を聞いたり、イベントで現地の特産物を食べたり…何もかもが初めての経験でした。活動の最後に行ったワークに「あなたにとってボランティアとは」という問いがあって、自分がそこに書いた事は今でもはっきり覚えているし、これからも変わらないと思ってます。
-では、いっしーにとってボランティアとは?
自分にとってボランティアとは「人を笑顔にするために努力すること」。夢職人はもちろん、ボランティアをする際は、いつもみんなに楽しんでほしいなと思いながらやっています。
-初めて参加したボランティア。実際、参加してみてどうでしたか?
大学に入って半年間、まだ大学の友達も少なく、ましてや他の大学の人たちと交流する機会なんて全くありませんでした。だから、ボランティアを通して初めて大学の外と関わる事ができて新鮮でした。また、当時1年生だった自分の周りには、年上の参加者が多く、その人たちがとても良くしてくれたこともあって、人と一緒に何かするって楽しいなとボランティアを通して初めて感じました。
(「僕らの夏休みProject」での活動の様子。大学の支部長を務めています。)
-東日本大震災のボランティアを終えて。夢職人に出会ったきっかけは?
東北のボランティアを終えて、東京に帰ってから速攻でネット検索をしました。自分はボランティアを通して「人の笑顔が見たい」と思ったので、震災のボランティアの他にもいろいろ見ていました。偶然にその時、夢職人をみつけてしまったんです(笑)
-夢職人の活動だと、震災のボランティアとは全く違う「子どもの教育」というジャンルになりますよね。特に夢職人で子どもと一番近くで関わるTA(※チームアシスタントの略:班活動中の子どもたちのリーダー役)を担当した時って率直にどんな気持ちでしたか?
率直に言うと、「ア!TAって大変!」ですね。初めてTAをやったのは夢職人に入って3ヶ月後の8月「あそびの達人」(※「あそびの達人」:夢職人の主催事業の名称)でした。それまでの活動では裏方として、道具の準備や子どもたちの班のサポートをしていたんです。だから、初めてのTAはガチガチに緊張していましたね。一応、初めてTAを担当した時は先輩スタッフと一緒でしたが、それが逆に緊張したりして(笑)。間違った接し方したらどうしようとか、自分なんかにうまく務まるのかとか…そんなことを考えていました。
でも、実際に当日を迎えて活動してみると不安だったことがなかったかのように、すごく楽しかったんです。その回の「あそびの達人」ではアスレチックがたくさんある公園をまわって、子どもたちと一緒に体を動かすことがメインの活動でした。だから、運動能力の差で突っ走る子と取り残された子の差がどんどん開いて…こういうときにTAはどうやって状況を改善しつつ、子どもたちが楽しめるように働きかけるかが難しかったですね。2人の大人がいても5人の子どもをまとめるのはこんなにも難しいのか!とも思いました。子どもに伝えたいことがあっても、なかなか子どもはすんなりと言うことを聞いてくれない。でもそれが子どもの良いところでもあるのかなと思うんです。大人の言うことに従うだけではなくて、型にはまりすぎない、自由な発想でものを考えて欲しい。そしてそこは大人になっても変わらないでいて欲しいとも思っています。
-TAを何度か経験してみて、はじめの頃と今で変わったところってありますか?
活動の前に準備をするようになったことです。子どもたちがより楽しめる・より自分に自信が持てる・より周りの子たちと仲良くなれる方法などを考えるようになりましたね。
あとは、色々な視点から考えられるようになりました。「こういうことが起きるかもしれない」「じゃあ次はこうしてみようかな」とか…最初の頃は知らないことが多くて、全く考えたことがなかったことも、色々経験していくうちに、広い視野で物事を見られるようになってきました。先輩のスタッフからお話を聞いたり、実際に活動中に起こったことから学んだり、一人ひとりの子どものことを理解していくうちに、視点が増えていった感じです。これは何回も活動に参加して経験を積み重ねてきたからこそ、得られたものなのだと思います。まだまだ他の先輩スタッフに比べると未熟なんですけどね(笑)
-「一人ひとりの子どものことを理解する」と話がありましたが、いっしーは子どもたちのことを理解するためにどんなことを意識していますか?
夢職人のような活動では、子ども同士はもちろん、大人と子どもの間で信頼関係を築くことも大切だなと思っています。スタッフたち大人は、子どもたちに信用されないと自分たちの言うことも聞き入れてもらえないんです。そうなってしまうと、重大な怪我や問題が起きてしまうかもしれない…だから子どもと仲良くなることはもちろん、信頼されることも必要なのだなと思います。そのために必要なのは、やはり「継続」して子どもと関わっていくこと。子どもと長い時間をかけて関わることで信頼関係を築く、そして彼らのお兄ちゃん・お姉ちゃんのような存在になれるように、少しでも多く彼らに関わっていくことが大切なのかなと思っています。
(いつも子どもの状況を気遣いながら声をかけてくれている。困った時には、そばで支えてくれる心強い存在。)
-ひとりひとりと深く長く関わってくことが大事なんですね。では、TAとして子どもたちをひとつのチームにまとめるうえで意識していることはありますか?
大事にしているのは、全員の意見を聞いてあげること。夢職人の活動では、子どもたちが話し合って進めていくプログラムが多いので、彼らの言っていることをいかに拾えるかが大事だと思っています。あと、子どもたちの発想は本当に面白いものばかりなので、聞いてみたいなっていうのもありますね。
あと、褒めること。せっかく子どもが周りの子を手伝ってあげたり、他の班より上手く出来ていることがあるのだから、やはりそこは触れてあげたい。大人と同じように子どもも褒められると嬉しい気持ちになる。それが自信へと繋がり、挑戦へと繋がり、もっとやろうという気持ちに繋がります。そして、褒めるのと同じくらい大事にしていることがもうひとつ、それは声掛けです。褒める・応援する・指導する…僕たちから子どもへの働きかけはいつも言葉を選びながら積極的に行うようにしています。
-では、これまでTAを経験してきた中で成長した、学んだと思うことを聞かせてください。
成長したなと思うことは、子どもに対して自分が考えることの視野が広がったことですね。例えば子どもに対してどのような働きかけをすればマナーを守れるようになるかとか、班の子どもたち同士が仲良くなれるかとか…
学んだことは継続することの大切さです。毎回活動に参加していると、知っている顔がどんどん増えてきて、それと一緒に「あ、いっしーだ!」っていう子どもの声もよく聞くようになりました。あと、一番嬉しいのは前に一緒の班になった子どもをまた、自分が担当できた時ですね。前に一緒に活動した時よりも成長しているんです。子どもの成長を見れるのがすごく嬉しいんです!そうやって子どもたちの成長を見守っていくことの大切さを夢職人に教えてもらったという感じがします。
ーいっしーが夢職人の活動を続けてきた理由がよくわかりました!インタビューをありがとうございました!
(インタビュアー:さくちゃん)